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明くる朝。目が覚めたとたん、まだ体調が回復していないことがわかった。無理はしないでおこう。だが、今日はホテルを移らなければならない。

チェックアウトをすませると、荷物を引きずりながら、マクエダ通りに出た。お目当てのホテルの看板をみつけると、そのビルの階段を最上階まで上がる。料金も手頃だし、セキュリティも万全そうだ。ここに二泊することにした。

部屋の準備ができていないというので、町を散歩するしかない。ヴェッチリアという市場に行ってみることにした。パレルモで最も賑わいを見せる、イスラムのスークにも似た市場だと聞いていたからだ。しかし、いざそれらしい場所に来てはみたが、市場はどこにも見つからない。賑わいのにの字も見あたらない。なぜだろう。もしかしたら、今日が日曜だからか。なんだか昨日に続いて運に見放されている予感。

ヴェッチリアは、パレルモの中でもイスラムの雰囲気を最も色濃く残しているところだという。クアットロカンティで交わる二本の街路について言及したゲーテは、続けてこのように記している。


「それゆえ、この二つの通りにあるものは容易に見つけることができるが、そのかわりに町の内部にはいると他国のものは戸惑いしてしまい、案内者の助けを借りなくては、とうていこの迷宮から抜け出すことができない」

このヴェッチリア地区、そして最初に泊まった宿の周囲が、まさしくこの迷宮の名残であり、往時のパレルモらしさをもっとも生き生きと感じ取れるところだ。結局、市場は見つけることができなかったけれど、ごちゃごちゃと入り組んだ路地を歩くのはそれ自体面白い体験だった。

宿に戻ると、しばらく昼寝。2時間ほど眠っただろうか、時計の針は2時半を回っていた。窓の外を見ると、なんと青空がのぞいている。昨日のリベンジだ。疲れてはいたけれど、思い切ってモンレアーレに行ってみることにした。しかし、こんなときに限ってなかなかバスがやって来ない。日曜だからに違いない。結局、バスは来たのは1時間もたってから。モンレアーレに着いたときには、太陽は雲の中にすっかり隠れてしまっていた。やれやれ。

体力を回復させるため、今夜のディナーはちょっぴり豪勢に。スパゲティ・ノルマとシチリア風カツレツ。アルコールは弱いのだが、景気づけに今夜はちょっとだけ、ということでコルボの赤を頼んだ。




お腹いっぱいで満足してトラットリアを出ると、遠くからマーチが聞こえてきた。続いて花火の打ち上げ音も。こんな遅くに、いったいなんの騒ぎだろう。

クアットロカンティを左へ折れ、マクエダ通りをホテルへと向かっていると、人の輪がこちらに近づいてくる。見ると、輪の中心には、聖母マリアらしき像があった。何かのお祭りなのだろう。信者に囲まれたマリア像は、目の前の教会へと入っていく。ぼくも吸い込まれるように後に続いた。

薄暗い教会の中で、キャンドルに照らされた聖母の姿がほんのりと浮かび上がっている。抱いている幼子はイエスだろうか。厳粛な光景から、しばらく目が離せなかった。

聖なる日曜日。つきには恵まれなかったけれど、最後に思いがけず聖なるお祭りと出会ったことで心が高揚し、なんだか救われた気分になった。明日から出直しといこう。
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