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昨日の霞がかっていた空気はどこへやら、いまこの島を包んでいる空気は、とても新鮮で、透明で、爽やかだった。
こんな好天になるとわかっていれば、昨日ではなく今朝ギリシャ劇場を訪れたのに。これからもう一度劇場に入り、みなが絶賛する眺望がどれほどのものなのかこの目で確かめてみようか。一瞬、体を動かしかけたが、それだけのためにまた何ユーロも入場料を払うのもなんだか悔しい気がするし、それに、優雅に景観を愛でるほどの時間も残っていない。きっぱりあきらめることにした。
カステルモーラの村や、『グランブルー』で有名なイソラ・ベッラの海岸も、今回は訪れることはできなかった。どの旅にもいえることだけど、将来の楽しみとしてあえて残したのだと考えれば、それはそれで悪くはない。
ともあれ、文明の十字路を渡る旅も、ひとまずここがゴール。
碧い海を眼下に望みつつ、そろそろタオルミーナに別れを告げることにした。
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