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   4.  砂漠の一夜  ―  メルズーガ
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2時間ほどラクダに揺られて幻想世界をさまよったのち、目的のキャンプ地に到着した。そこは、小高い砂丘のふもとに位置していた。

「この丘に登って夕陽を見てくるといいよ。その間に夕食を作っておくから」

ラクダを降りた僕に向かって、ラクダ使いの男はこう言い残し、ラクダを引いてテントの方に去っていった。

目の前の砂丘を見上げた。風が作り上げた鋭い稜線が、足下から頂上までくっきりと延びていた。稜線を挟んで左側の面だけが、夕陽を受けてオレンジ色に輝いている。

その色と光と模様が織りなす光景に、しばし立ちつくす。実際、動きたくもなかった。あそこまで登ってこいなんていとも簡単に告げられたけれど、体調不良の僕には、その頂上が果てしなく遠く感じられた。

周りを見渡してみた。あそこ以外に、地平線に沈む太陽を眺められる場所はなさそうだった。
覚悟を決めた僕は、稜線に沿って登り始めた。

後悔はすぐにやってきた。砂丘は、見た目より急なのだ。そのうえ、サラサラの砂に足がめり込む。思うように進まない。
懸命に登っているつもりなのだが、頂上はいっこうに近づいてこない。どうしてなんだ。
すでに汗びっしょり、息はゼーゼー。もう限界だ。

ふと見上げると、夕陽は丘の向こうに消え去ろうとしていた。
力尽きた僕は、丘の中腹にドカッと腰を下ろして、沈み行く太陽を茫然と見送った。さようなら……。

このリベンジは、明日の朝果たすしかない。