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   4.  砂漠の一夜  ―  メルズーガ
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集落をひととおり見て回り、宿に戻った。まだ無理は禁物だ。昼寝をして体調の回復に努めたのち、シャワーを浴び、デイパックに必要な荷物を詰め込む。これで準備はOK。

日差しも若干和らいできた4時過ぎ、いよいよ砂漠に向けて出発。
ホテルの前には、愛らしいラクダがひざまずいていた。ラクダに乗るのは初めてだ。慎重にまたがると、うめくような声を発した。
ごめんよー。重たいけど、明日の朝まで我慢してね。

砂漠ツアーといっても、今日の参加者は僕一人だけ。愛嬌のあるラクダとベルベル人のガイドが頼りだ。

ちっぽけな村を出て、石混じりの浅い砂地をしばらく進むと、ついに本格的なサラサラの砂漠の中に突入した。

行く手には、砂と空だけ、オレンジと青だけの世界。

モロッコという国は、この2つの色に支配されているのだ。マラケシュのメディナもそうだったし、ワルザザートのカスバもそうだった。そしてその支配の中心にある場所が、この砂漠なのだろう。








ラクダが一歩進むごとに、陽が西に傾くほどに、オレンジとブルーはいっそう深みを帯びていく。

耳を澄ませてみる。砂を蹴る音とラクダの息づかいだけが鼓膜をかすかに振るわせる。それ以外は、何も耳には届いてこない。

静寂。

「しーんと静まりかえる」の「しーん」の本当の意味が、初めて理解できたような気がする。音にならない音とはこのことを言うのか。

鮮やかな色と静寂の音が、次第に純度を高めていく。


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