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7時半のバスでトラーパニに戻りたかったのだが、朝食の誘惑に負けて、出発を1時間遅らせることにした。セジェスタへのアクセスはひどく悪いからできるだけ早く出発したほうがいいとはわかっていたのだが。おとといのドゥッガでの失敗を繰り返しても知らないぞ……。そう思いつつ、心の底では大丈夫さと根拠なく安心しきっている自分がいる。
8時過ぎにチェックアウト。宿の女主人は最初は恐そうに見えたけど、実際はとても親切だった。シチリア人は疑り深くて頑固。そんな風評を耳にしていたことが、偏った第一印象を抱かせたのかもしれない。
朝霧は、夜明けより心持ち濃くなったような気がした。人通りのまばらな石畳の路地に白く立ちこめる霧。これを期待していたのだった。もっと深くたちこめていたなら、どれほど幻想的な光景が目の前に広がっていたことだろう。が、今回はその一端をかいま見ただけでよしとしよう。
トラーパニ門を出ると、すでにバスが停まっていた。行きと同様、乗客はほとんどいなかった。ヘアピンカーブを何度も曲がりながら、下界へと戻っていく。次第に霧が消え去り、日の光が射し込んできた。 |
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