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「動のマラケシュ、静のフェス」
モロッコを代表する2つのメディナを歩いてみて、そんな印象が頭に焼きつけられつつあった。
フナ広場という大舞台を持つマラケシュがダイナミックでドラマチックなのに対し、丘の合間にすり鉢状に広がるフェスは静謐でどこかミステリアスだ。もちろん、マラケシュにも静寂はあるし、フェスにも喧噪はある。が、全体としての印象は、動と静という対照的なものだ。
旅行前の計画時には、いずれか一方の街を訪問リストからはずすことも検討したのだが、実際にこうして2つの街を訪れたからこそ、それぞれの持つ対照的な魅力をより明確に感じ取れたような気がして、両方訪れてよかったと感じていた。
しかし、僕は予定を1日繰り上げて明日フェスを発つことにした。これ以上ここにいても進展がなさそうだと感じたからだ。気持ちよく写真が撮れない。これに尽きた。メディナが薄暗いせいもあるが、カメラを極端に嫌う人が多いのだ。女性は宗教上そうであることは重々承知していたが、シリアなどのイスラム国と比べ、男性や子供にもカメラ嫌悪の傾向が強く見られた。僕にとって、カメラを通して街や人とコミュニケーションを図れなければ、旅の醍醐味も半減してしまう。さりとて、いい写真が撮れるまでがんばる、という根性もないし、そんなに無理して撮って何になるとも思ってしまう。やはり、明日ここを離れよう。 |